先に結論を書く。英国の予算は10月28日(水)で、演説は日本時間21時30分ごろに始まる見込みだ。ジョン・ヒーリー財務相は2026年7月31日、議会下院の財務委員会のメグ・ヒリアー委員長に宛てた書簡で、予算責任局(OBR)に経済・財政見通しの作成を頼み、10月28日に公表すると伝えた。予算はその見通しと一緒に出る。ポンド円やポンドドルを持っている人には、税と借入れの計画、それを外から点検する数字が、同じ夜に届くことになる。
結論:10月28日の夜9時半ごろ、ポンドの材料が2つ同時に出る
10月28日に出るものを2つに分けて並べた。1つは財務相が議会で読み上げる予算そのもの、もう1つはOBRの見通しだ。
| 出るもの | 出す側 | 中身 | 日本時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 予算(Budget) | 財務省・ヒーリー財務相 | 税の上げ下げ、歳出、国債で賄う額 | 21時30分ごろ演説開始 |
| 経済・財政見通し(EFO) | 予算責任局(OBR) | 成長率・物価・借入れの見通し、財政ルールの達成度 | 演説の進行に合わせて公表 |
予算は政府の計画で、OBRの見通しはその計画で数字が合うかを確かめる側の資料だ。同じ夜に両方が出るので、演説で耳ざわりのよい言葉が並んでも、借入れの見通しが悪ければ市場はそちらを見る。ポンドの材料は演説の言葉ではなく、2つの資料の数字の組み合わせだと考えておくと、夜の値動きを追いやすい。
7月31日の書簡には何が書かれていたのか?
英国財務省は2026年7月31日、書簡のPDFを政府サイトに載せた。宛先は議会下院の財務委員会の委員長、署名はヒーリー財務相だ。本文は短く、予算の日付に関わる部分は2文しかない。
| 書簡の要素 | 記述(筆者訳) |
|---|---|
| 日付 | 2026年7月31日 |
| 宛先 | 財務委員会 委員長 メグ・ヒリアー議員 |
| 依頼 | OBRに、10月28日公表の経済・財政見通しの作成を頼んだ |
| 予算 | 見通しには予算が伴う |
| 方針 | 財政ルールを守り、不確実性と中東の不安定さに備えた余裕を残す |

書簡には「財政の信認は経済の安定の土台」という一文がある。冒頭では、就任して2週間で成長に手を付け始めたとも書いている。7月半ばに財務相が交代した直後の、初めての予算ということになる。何を増税し、どこまで国債で賄うかは、10月28日まで書かれていない。だから日付だけが先に決まっている。
なぜ日本時間21時30分なのか|10月25日に時差が9時間へ
英国の予算演説は、水曜日の正午に始まる首相質疑のあと、12時30分ごろに始まるのが通例だ。2026年は日付の組み合わせが少しややこしい。英国の夏時間は10月25日(日)の午前2時に終わり、日本との時差が8時間から9時間に広がる。
| 期間 | 英国の時間 | 日本との時差 | 英国12時30分は日本の |
|---|---|---|---|
| 10月24日(土)まで | 夏時間(BST) | 8時間 | 20時30分 |
| 10月25日(日)から | 冬時間(GMT) | 9時間 | 21時30分 |

夏の感覚で20時30分と覚えていると、1時間早く身構えることになる。米国の冬時間入りは11月1日(日)なので、10月28日の週は英国だけが先に時計を戻した状態だ。ロンドン市場とニューヨーク市場が重なる時間帯もいつもと1時間ずれる。演説の開始は議会の当日の進行で前後するので、21時30分は「ごろ」として扱い、当日に議会の予定で確かめてほしい。
OBRは何を出すのか?予算と同じ日に出る、もう1つの数字
OBRは2010年に設けられた、政府から独立して経済と財政の見通しを出す機関だ。予算の日には「経済・財政見通し(Economic and fiscal outlook)」を公表する。成長率や物価の見通しに加え、政府の計画どおりに進んだ場合の借入れの額と、財政ルールを満たせるかどうかが書かれる。

書簡で財務相は、財政ルールを守り、余裕を残すと書いた。その余裕がいくら残るのかを数字で示すのがOBRの見通しになる。市場で「ヘッドルーム」と呼ばれることがある部分で、ここが小さいと、次の予算でまた増税が要るのではないかという見方につながりやすい。演説の言葉と、OBRの借入れの数字が食い違っていないか。予算の夜に見るのは、その1点だと私は考えている。
2022年9月の小型予算で、ポンドは1.03ドル台まで売られた
予算の日にポンドが崩れた例として、よく引かれるのが2022年9月だ。日付順に並べる。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2022年9月23日(金) | クワーテング財務相(当時)が「小型予算」を公表。財源の示されない大型減税を並べ、OBRの見通しは添えられなかった |
| 2022年9月26日(月) | ポンドは対ドルで1.03ドル台まで下げ、最安値を付けた |
| 2022年9月28日(水) | イングランド銀行が長期国債の一時的な買入れを発表 |
| 2022年10月14日(金) | クワーテング財務相が解任 |
| 2022年10月20日(木) | トラス首相が辞意を表明 |

この回は、減税の中身より「OBRの数字が無いまま出た」ことが不安を大きくしたと説明されることが多い。今回の書簡が、真っ先にOBRへの依頼を書いているのは、その経緯を意識しているからだろう。ただ、2022年と同じことが起きるとは限らない。過去の例は「予算の夜に大きく動いたことがある」という事実として覚えておくにとどめ、方向は予想しない。
窓口で「ポンドは値動きが荒いんですよね」と聞かれた話
私が地方銀行の窓口にいた頃、英国旅行のついでにポンドの外貨預金を考えている人から「ポンドって値動きが荒いんですよね」と聞かれたことがある。私はそのたびに、値動きの大きさより先に、為替手数料の幅を見てほしいと伝えていた。ポンドは米ドルより手数料の幅が広く設定されていることが多く、少し動いただけでは手数料の分を取り戻せないからだ。
FXでも同じ考え方が使える。ポンド円は米ドル円よりスプレッドが広い通貨ペアで、指標や要人の発言が重なる時間帯には、さらに広がることがある。予算の夜に注文を出すなら、値動きの予想より先に、その時間帯に自分の業者のスプレッドがどこまで広がるかを確かめておく。スプレッドの見方はスプレッド比較の記事、時間帯の考え方は取引時間の記事にまとめてある。
10月最終週は、英国・日本・米国の予定が続く
10月28日の前後には、円とポンドの両方に関わる予定が並んでいる。日銀の金融政策決定会合は10月29日と30日で、2日目に結果が出る。カナダ銀行の判断も同じ28日の夜だ。
| 日付 | 中身 | 日本時間の目安 |
|---|---|---|
| 10月25日(日) | 英国が冬時間へ(時差9時間) | ― |
| 10月28日(水) | 英国の予算+OBRの見通し | 21時30分ごろ |
| 10月28日(水) | カナダ銀行の政策金利 | 22時45分 |
| 10月30日(金) | 日銀 金融政策決定会合の結果 | 会合終了後 |
| 11月1日(日) | 米国・カナダが冬時間へ | ― |
ポンド円は、英国の財政と日本の金利の両方で動く。日銀は9月18日に政策金利を1.25%程度へ上げており、30日の結果はその次の一手になる。水曜の夜に英国、金曜の昼に日本と、2日おいて両方の材料が出る週だ。片方だけで判断すると、2日後に前提が変わることがある。カナダの日程はカナダ中銀の記事に書いた。
航の推し:演説の中身より先に、時刻を手帳へ写す
私の結論はこうだ。ポンドを扱うなら、10月28日21時30分ごろと10月30日の日銀の結果を、先に日本時間で書き出しておく。予算の中身は当日まで分からないし、OBRの数字がどう出るかも分からない。分かっているのは日付と時刻、そして2022年に一度大きく崩れたという事実だけだ。
予算の夜は値動きが大きくなりやすく、レバレッジをかけたFXでは預けた証拠金を上回る損失が出ることがある。取引単位は小さくし、逆指値の位置を先に決めておく。注文の種類は注文方法の記事、倍率の考え方はレバレッジの記事で確認してほしい。
日付は2026年10月21日に英国財務省の書簡で確認したものだ。演説の開始時刻は通例で、当日の議会の進行で変わりうる。
よくある質問
2026年10月28日(水)だ。ジョン・ヒーリー財務相が7月31日付の書簡で、予算責任局(OBR)の経済・財政見通しを10月28日に公表し、予算をそれに合わせると議会の財務委員会に伝えた。
演説は水曜正午の首相質疑のあと、英国時間12時30分ごろに始まるのが通例だ。英国は10月25日(日)に冬時間へ移り時差が9時間になるので、日本時間21時30分ごろにあたる。正確な開始時刻は当日の議会の予定で確かめてほしい。
英国の予算責任局(Office for Budget Responsibility)で、政府から独立して経済と財政の見通しを出す機関だ。2010年に設けられ、予算の日に成長率や借入れの見通しを同時に公表する。
ある。2022年9月23日の小型予算は財源の示されない減税を並べ、OBRの見通しも添えられなかった。ポンドは9月26日に1.03ドル台まで下げて対ドルの最安値を付け、イングランド銀行は9月28日に国債の買入れを発表した。
参照した一次情報
- HM Treasury「Chancellor letter to the Treasury Select Committee (TSC) - Budget 2026 date」(2026年7月31日)(予算とOBR見通しの日付・財政ルール/2026年10月21日確認)
- Office for Budget Responsibility 公式サイト(経済・財政見通しの公表)
- Bank of England「Bank of England announces gilt market operation」(2022年9月28日)
- GOV.UK「When do the clocks change?」(2026年10月25日に夏時間終了)
- 日本銀行「金融政策決定会合の日程」(10月29・30日)
※英文の日本語訳と要約は筆者による。挿絵:いらすとや


