先に結論を書く。スイスの政策金利は0%で、日本の1.25%より低い。スイス国立銀行(SNB)は2026年9月24日の金融政策評価で、政策金利を0%のまま据え置いた。日銀はその6日前、9月18日に政策金利を1.25%程度へ引き上げている。低金利通貨の代表として長く並べられてきた円とフランは、金利の順番が入れ替わった。

結論:フランの金利は0%で、円の1.25%より低い
2つの中央銀行が9月に決めた数字を並べる。SNBは0%で据え置き、日銀は0.25%引き上げて1.25%程度にした。差は1.25ポイントで、円のほうが高い。
| 中央銀行 | 決定日 | 決定 | 決定後の政策金利 |
|---|---|---|---|
| スイス国立銀行(SNB) | 2026年9月24日 | 据え置き | 0% |
| 日本銀行 | 2026年9月18日 | 0.25%引き上げ(賛成7・反対2) | 1.25%程度 |
FXでスイスフラン円を買えば、低い金利の通貨を持って高い金利の通貨を手放す形になる。業者が決めるスワップポイントは金利差そのものではないが、差の向きがこうなっている以上、フランを買って金利差を受け取る構図は成り立ちにくいと考えておくのが自然だ。
9月24日に決まったことは3つ
SNBの発表文は、最初の段落に決定事項を3つ書いている。
- SNBの政策金利を0%で据え置く
- 銀行がSNBに預ける当座預金のうち、一定の基準を超える部分に付ける金利の割引幅を0.25ポイントで据え置く
- 適切な金融環境を保つため、必要に応じて為替市場で行動する用意がある

2つ目は少し込み入っている。銀行がSNBに置いた当座預金には、基準額までは政策金利の0%が付く。基準を超えた部分は、そこから0.25ポイント差し引いた金利になる。つまり超過分はマイナス0.25%だ。銀行にお金を寝かせ過ぎない仕組みと読める。
私が注目したのは3つ目だ。為替市場で行動する用意がある、という書き方は、フランが動き過ぎれば売買に入りうるという予告にあたる。金利を動かす余地が小さいぶん、為替そのものを手段として残している。
物価0.8%を押し上げたのは石油製品
スイスの消費者物価は、5月の前年比0.6%から8月の0.8%へ上がった。発表文によれば、モノの物価が8月にプラスへ戻ったのは2024年5月以来で、主因は石油製品の値上がりだった。

それでも0.8%は低い。SNBは消費者物価の上昇率が年2%未満であることを物価の安定とみなし、物価が下がり続けるデフレも安定とは扱わない。9月の条件付きインフレ予測は2026年0.7%、2027年0.8%、2028年0.8%だった。予測期間を通して範囲の中に収まる、という見立てだ。この予測は、政策金利が期間中ずっと0%のままという前提で作られている。

景気の数字も添えておく。SNBは2026年の成長率を1.5〜2%、2027年を1.5%前後と見ている。4〜6月期は化学・医薬品が強く、国内総生産の伸びは実態より大きく出たとも書いている。中東情勢でエネルギー価格がさらに上がる場合は、物価を押し上げつつ成長を大きく抑える、というのが最大のリスクとして挙げられた。
円とフランの金利差は、向きが逆になった
発表文にはもう1つ、為替に関わる記述がある。中期のインフレ予測を少し上方修正した理由の1つとして、スイスフランが弱くなったことを挙げている。フランが安くなれば輸入品が高くなり、物価を押し上げる。SNBがその効果を見込んでいる、ということだ。
ここで日銀の側を見る。日銀は9月18日の公表文で、基調的な物価上昇率が2%に近づいたことを利上げの理由に挙げ、今後も政策金利を引き上げていく方針を書いた。片方は0%に据え置いて先も0%を前提にし、もう片方は上げていくと書いている。金利差は1.25ポイントで、さらに広がる方向にある。
欧州とアメリカについても、SNBは「ユーロ圏と米国で政策金利が引き上げられた」と書いた。主要な中央銀行が上げる中で、SNBだけが0%に留まっている形だ。
窓口で「フランは安全ですよね」と聞かれた話

私は以前、地方銀行の窓口で為替の相談を受けていた。外貨預金を考える人から「スイスフランは安全な通貨ですよね」と聞かれることが何度かあった。言いたいことは分かる。有事に買われる通貨として、ニュースでよくそう紹介されるからだ。
ただ、安全という言葉には2つの意味が混ざっている。通貨として信用されていることと、持っている人の円換算の資産が減らないことは別だ。フランが買われる局面では円も買われやすく、フラン円のレートがどちらへ動くかは決まっていない。しかも今回の発表文が示すとおり、フランは最近弱くなっていた。
当時の私が伝えていたのは、外貨を持つ理由を先に言葉にしてほしい、ということだった。金利なのか、分散なのか、旅行の予定なのか。理由が金利なら、0%のフランは候補から外れる。
次の判断は12月10日、日本時間17時30分
SNBの金融政策評価は年4回、3月・6月・9月・12月に行われる。次回は2026年12月10日(木)で、現地時間9時30分に発表、10時から記者会見の予定だ。スイスの冬時間は日本より8時間遅いので、日本時間では17時30分になる。
| 確認する数字 | 9月24日時点 | 12月10日に見る点 |
|---|---|---|
| 政策金利 | 0% | 0%が続くか、マイナスに戻るか |
| 消費者物価(前年比) | 8月0.8% | 石油製品の値上がりが続いているか |
| 条件付きインフレ予測 | 2026年0.7%/2027年0.8% | 上方修正が続くか |
| 為替市場への言及 | 必要に応じて行動する用意 | 書き方が強まるか、弱まるか |
4つ目は見落とされやすい。発表文の為替の一文は毎回ほぼ同じ形で置かれるが、言い回しが変わった回は注意して読む価値がある。
航の推し:フランは金利で持つ通貨ではない
私の結論ははっきりしている。いまのスイスフランは、金利差を受け取る目的で持つ通貨ではない。政策金利は0%で、日本の1.25%より低く、SNBの予測はその0%が続く前提で作られている。
フランを扱うなら、目的は分散や値動きの観察になる。その場合でも、レバレッジをかけたFXでは為替の振れがそのまま損益になり、預けた証拠金を上回る損失が出ることがある。取引単位は小さく始め、損切りの位置を先に決めておく。スワップポイントの仕組みはスワップポイントの基本で、長期保有の考え方はスワップ投資の注意点で確認してほしい。
数字は2026年10月3日にSNBと日銀の公式発表で確認したものだ。12月10日にはまた変わりうる。
よくある質問
0%だ。スイス国立銀行は2026年9月24日の金融政策評価で、政策金利を0%に据え置いた。基準を超える当座預金に付ける金利の割引幅も0.25ポイントで据え置いている。
円だ。日本銀行は2026年9月18日に政策金利を1.25%程度へ引き上げた。スイスは0%なので、差は1.25ポイントで円のほうが高い。スイスフラン円を買う取引では、金利の低い通貨を持つ形になる。
2026年8月の消費者物価は前年比0.8%で、5月の0.6%から上がった。主因は石油製品の値上がりだ。SNBの予測では2026年平均0.7%、2027年0.8%、2028年0.8%で、SNBが物価の安定とみなす「年2%未満の上昇」に収まる見通しになっている。
2026年12月10日(木)だ。現地時間9時30分に発表、10時から記者会見の予定で、日本時間では17時30分に発表される。SNBの金融政策評価は3月・6月・9月・12月の年4回行われる。
損をしないとは言えない。有事に買われやすい通貨であることと、円で見た資産が減らないことは別の話だ。SNBの9月の発表文も、最近フランが弱くなったことを物価予測の修正理由に挙げている。為替の動きで円換算の価値は上下する。
参照した一次情報
- Swiss National Bank「Monetary policy assessment of 24 September 2026」(政策金利・当座預金の割引幅・物価・予測・成長見通し/2026年10月3日確認)
- 日本銀行「当面の金融政策運営について」2026年9月18日(PDF)(政策金利1.25%程度への引き上げ・採決)
※英文の日本語訳と要約は筆者による。挿絵:いらすとや


